死後事務委任契約のすすめ

近年、少子高齢化と核家族化が進み、お子さんが遠方で暮らしている方や、独身のおひとり様が増えています。
死後事務委任契約は、そのような状況の中で年々需要が高まっている契約です。ご自身が亡くなった後に希望する葬儀や埋葬方法を叶えるため、死後事務委任契約を検討してみてはいかがでしょうか。

死後事務委任契約とは

人がなくなると、葬儀を始めとして、亡くなるまでにかかった医療費や公共料金の支払い、年金受給の停止など様々な手続きをする必要がでてきます。これらの事務手続きを死後の事務と呼び、通常は亡くなった人の親族が行ないます。しかし、身寄りがなかったり、あっても疎遠だったりした場合には、それらの手続きをする人がいません。このような場合の手続きを行う人と内容について事前に決めておく契約が「死後事務委任契約」です。

死後事務委任契約でできること

1.死亡届の提出
2.葬儀や埋葬の手続
3.親族や知人への連絡
4.医療費などの清算
5.病院からの遺体の引き取り
6.電気・ガス・水道などの清算や解約

死後事務委任契約を利用すべき人

死後事務委任契約は、ご家族がいない人や、いても疎遠で頼れない人、又は、周りの人にできるだけ迷惑や負担をかけたくないと考える人が、利用されるとよいでしょう。
また、自身が望む葬送がある場合でも、この制度を利用した方がよいでしょう。生前に望んでいた葬送を、親族が必ずしも採用してくれるとは限りません。死後事務委任契約を交わしておけば、望みを叶えられるでしょう。

遺言書との関係

遺言書を利用すればよいのではないか、と考える方がいるかもしれませんが、死後の事務(お葬式や埋葬等)については遺言書に記載したとしても法律上の効力がなく、実際的ではないのです。遺言書が強制力をもつのは財産価値のあるものについてです。
死後の事務(お葬式や埋葬等)については、しっかりと死後事務委任契約に記しておくことで、自分が望む葬儀や埋葬を実現することができるのです。

公正証書で作成すると安心

死後事務委任契約は公正証書によって作成します。私人間で作成した契約書でも有効ではあるのですが、証拠力という点からいえば、公正証書に勝るものはありません。法律のプロである公証人が事前に内容のチェックを行なうので安心です。
もしも行政書士や弁護士といった専門家が作成した場合には、法律のプロがダブルでチェックをすることとなるのでより安心できる契約書を作成することができます。

死後事務委任契約に関するQ&A

Q.成年後見人は死後事務をやってくれるのでしょうか?

基本的に葬儀や埋葬の手続きは後見人の仕事ではありません。任意後見契約の際に一緒に死後事務委任契約を結んでいれば行ってくれますが、一般的な法定後見人のような場合、被後見人(認知症の方や障がい者の方のように後見人がついてサポートされる方)の方が亡くなった時点で成年後見業務は終了となります。

Q.身寄りがなくても市町村や国が何とかしてくれるのでは?

確かに、身寄りの無い方のように誰も故人の死後事務を行わないような場合は市町村にて火葬等は行ってくれます。しかし、遺体を放置する訳にはいかないので最低限行われることであり、遺品整理や家屋の明け渡し、未払い費用の清算などは一切行ってはくれません。事前に準備をしておかないと大家さんやこれまでお世話になった方々へ多大な迷惑を掛けてしまうことになります。

Q.死後事務委任契約ではどこまでお願いできるのでしょうか?

基本的に委任内容は自由ですので希望する内容は反社会的な行為を除いて依頼可能です。ただし、依頼者本人や依頼者の家族でしか行えない、医療行為への同意などについては行えません。それは成年後見人であっても出来ないものになります。

死後事務委任契約は、基本的に相続人がいない場合に検討するべきものです。
それに遺言書、任意後見契約等を組み合わせることで、たとえ、高齢のおひとり暮らしであっても「老いる」ことによるリスクをかなり低減させることができるでしょう。
当事務所では、死後事務委任契約書作成をお手伝いいたします。興味のある方はぜひご相談ください。