行方不明の相続人がいる場合

相続が開始すると、相続人の間で遺産分割協議をして遺産を分け、手続をすることになります。遺産分割協議は、相続人全員の協力が必要で、相続人が一人でも欠けると、遺産分割協議は成立しません。しかし、相続人がどこにいるのかわからない場合があります。今回は、相続人の住所が不明の場合と、相続人が何年も行方不明になっている場合、2つのケースについての対処法を説明します。

戸籍謄本を取得して相続人を調べる

相続手続きを始めるにあたって、一番初めにすべきは相続人の確定です。戸籍謄本を取り寄せて相続人調査を行います。相続人調査では、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍のほか、相続人とのつながりがわかる戸籍謄本等をすべて揃えなければなりません。この際、戸籍謄本を丁寧に慎重に読み解くことが求められるので、非常に面倒な作業を強いられることになります。また、1つの役所だけで必要な戸籍謄本が揃うケースはほとんどなく、いくつもの役所に請求する必要があります。

戸籍謄本を取得する際に、相続関係や利害関係を証明する書類の提示が必要になるなど、非常に手間がかかります。相続人調査は弁護士・司法書士・行政書士といった専門家に任せた方がスムーズです。

相続人の住所が不明の場合

相続が発生し、相続人がどこに住んでいるかが不明ということがあります。亡くなった人が遺言を残していない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、住所が不明の相続人も探し出して連絡をとる必要があります。

戸籍の附票で現住所を調べて連絡を取る

行方不明の相続人の現住所は、一般的には、戸籍謄本と戸籍の附票の写しを取得することで、市役所が把握している住所が分かります。戸籍の附票は、本人の本籍地の市町村役場において、同一戸籍または直系親族の人が請求できます。

専門家に相続人調査を依頼すれば、相続人の現在の住所を調べてもらえます。また、代理人として連絡をとってもらうこともできます。

相続人が行方不明の場合

不在者財産管理人の選任申立てを行う

住所不明の相続人の現住所がわかっても、実際にはそこに住んでおらず、連絡がとれないこともあります。行方不明の相続人がいても、その人を除いて遺産分割協議を行うことはできません。

この場合、遺産分割協をする前に、家庭裁判所に申し立てをし、不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。不在者財産管理人が選任されると、不在者財産管理人を行方不明の相続人の代理人とみなして遺産分割協議を行うことができます。

不在者財産管理人には特別な資格は必要なく、申し立ての際に候補者を指定することもできます。実際には、利害関係などを考慮したうえで、裁判所の保有している候補者リストにもとづき弁護士や司法書士が選任されるケースが多くなっており、その際は報酬が発生します。

不在者財産管理人を選任する方法

不在者財産管理人の選任申し立ては、通常、相続人などの利害関係人が行います。申立書には、不在者の戸籍謄本、戸籍附票のほか、不在の事実を証する資料(捜索願の受理証明書など)、不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書など)、申立人の利害関係を証する資料(相続人の場合には戸籍謄本など)を添付する必要があります。

なお、申し立ての際には、申立手数料800円、郵便切手(数千円程度)のほか、財産管理人の報酬にあてるため、20~30万円程度の予納金を裁判所に納めなければならないことがあります。

不在者に十分な財産があれば予納金は還付されますが、財産が少ない場合には予納金は戻ってこないことがありますから注意しておきましょう。

失踪宣告の申立てを行う

行方不明の状態が7年以上(災害等の場合には1年以上)続いており、その相続人が生きているのか死んでいるのかもわからないという場合には、失踪宣告の申し立てを行うという方法もあります。失踪宣告を受けた人は死亡したものとみなされるため、その相続人を除外して遺産分割協議を行うことができます。

行方不明の相続人への対処方法は、考えなければならないことがたくさんあるので、専門家へのご相談をおすすめいたします。
当事務所は相続人が行方不明の場合についても、できる限り将来トラブルが発生しないよう、専門的な観点から検討・提案いたします。