相続した土地を手放したいとき

相続した不要な土地を、国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が4月に始まり、法務省が8月末でまとめたところ、全国の相談件数およそ1万4000件に対して、申請件数は885件。そして初めて、9月に富山県内の2か所の宅地を引き取ったと発表しました。全体としてみればまだごく一部です。
その承認を得るためには厳しい審査や負担金があるため、手放しに喜ぶことはできません。この制度について、留意すべきポイントをまとめました。

相続土地国庫帰属制度とは

「相続土地国庫帰属制度」とは、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度です。一定の要件を満たす相続土地は、負担金を支払えば国庫に帰属させることができます。

制度の対象土地・対象者

本制度の対象となるのは、相続人が相続または遺贈(遺言による贈与)によって取得した土地(共有持分を含む)です。
生前贈与を受けた土地や、相続人以外の者が遺贈を受けた土地については、本制度を利用できません。

制度利用のハードル

 建物があるとNG

土地上に建物が存在する場合、そのままでは相続土地国庫帰属制度を利用できません。先に建物を解体・撤去する必要があります。
建物の解体・撤去には数百万円程度の費用がかかるため、相続について話し合う段階から解体コストを念頭に置いておきましょう。

 地形等によってはNG

管理の上で支障となる地形等がある場合も、相続土地国庫帰属制度を利用できません。

(例)
・勾配30度以上、高さ5メートル以上の崖があり、管理が非常に大変な土地
・通常の管理および処分を阻害する樹木が植えられている土地
・除去しなければ通常の管理および処分ができない埋蔵物が埋まっている土地
・公道に通じていない土地
・水路等を通らなければ公道に至ることができない土地
・崖があって公道と著しい高低差がある土地
・主に森林として利用されており、市町村森林整備計画に適合していないため、追加で造林、間伐、保育を実施する必要があるもの
など

特に山間部の入り組んだ土地では、地形等を理由に国庫への帰属が不承認となる可能性があります。相続に関する話し合いの段階から、相続土地国庫帰属制度を利用できるかどうか確認しておきましょう。

審査手数料・負担金の納付が必要

相続土地国庫帰属制度の申請時には、土地1筆当たり1万4000円の審査手数料がかかります。
また、相続土地の国庫への帰属が承認された場合には、以下の金額の負担金を納付しなければなりません。

宅地

原則として20万円
※市街化区域・用途地域が指定されている地域内の土地は面積に応じて計算
(例)200㎡:79万3000円

田・畑

原則として20万円
※市街化区域・用途地域が指定されている地域、農用地区域、土地改良事業などの施工区域内の農地は面積に応じて計算
(例)1000㎡:112万8000円

森林

面積に応じて計算
(例)3000㎡:29万9000円

その他

20万円

※土地の種類や面積によっては、負担金が高額になることもあります。また、境界を確定するための諸費用が発生する場合もありますのでご注意ください。

相続土地国庫帰属制度に関するQ&A

Q.兄妹で共同相続した土地は国に帰属させることはできますか?

はい、できます。その際は兄妹全員が共同して申請を行う必要があります。
また、土地の共有持分を相続以外の原因(売買など)により取得した共有者がいるときであっても共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を活用することができます。

Q.どこに相談したらよいでしょうか?

お近くの法務局の窓口で相談が可能です。予約が必要になる場合がありますので、電話で確認の上お出かけください。
また、行政書士は本制度の申請書作成を代行することができますので、お近くの行政書士に相談することもおすすめいたします。

Q.相続放棄とどのように違いますか?

現在でも、相続人全員が放棄すると、土地は国庫に帰属することになっています。しかし、相続放棄してしまうと、いらない土地のみではなく、自宅や預貯金、金融資産などもすべて放棄しなくてはなりません。本制度はいらない土地のみを国庫に帰属させることができます。

制度利用料のほか、測量に係る費用など、申請者はまとまったお金が必要になります。相続したいらない土地を管理し続ける負担と比較しながら本制度を利用するべきか検討してみるとよいでしょう。