遺言書で自分の財産を守る

遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったという内容のニュースがありました。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えました。このニュースをご覧になって、皆様は遺言書をつくることがどれだけ大切なことかを痛感したのではないでしょうか。

相続人も遺言書もない財産はどこへ

相続人も遺言もない遺産は、利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が整理することになります。未払いの税金や公共料金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認します。
一緒に暮らしたり身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば家裁の判断などにもとづいて財産を分与し、残りは国庫に入ります。

相続人がいない場合にできる対処法

法定相続人がいない場合、被相続人が希望する人に遺産を渡すことは基本的に難しくなります。たとえば、被相続人は内縁の妻に遺産を渡したいと思っていたとします。内縁の妻は特別縁故者なので、特別縁故者として遺産を請求すればいいと思うかもしれません。
しかし、特別縁故者による遺産請求は必ず認められるわけではないのです。法定相続人がいない場合かつ希望する人に遺産を渡したい場合は、遺言書で遺産の受取人を指定するという方法があります。

遺言書の種類

自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺言の全文、日付、氏名を自書するものとなります。近年の法改正により「財産目録」に関してはパソコンによる作成や不動産全部事項証明書や通帳のコピーを添付する方法も認められています。その他の遺言書に比べ手軽に作成することができますが、場合によっては無効になってしまうこともあります。

公正証書遺言

公正証書遺言は公証人に作成を依頼し、公証役場にて保管を行う遺言です。費用はかかりますが、安全、確実な方法といえます。
また遺言書に記載する財産は正確なものでなければならないため、不動産については登記簿謄本、預金口座については通帳コピーなどの提出が求められます。公証役場と遺言書作成案の打ち合わせが必要になるため、通常2週間〜1ヶ月程度の期間がかかると考えておく必要があります。

秘密証書遺言

親族等はもちろん、公証人にも遺言の内容を知られることはありません。公証役場にて2人の証人の同席が必要となりますが、公証人同様、2人の証人にも内容を知られることもありません。秘密証書遺言は、遺言者以外だれも中身を見ていないため、有効な遺言にするための責任はすべて遺言者自身にかかってきますので注意が必要です。

専門家がすすめる遺言書

自筆証書遺言だと発見までに時間がかかり、第三者による偽造・変造の疑義が生じるなどトラブルが起こりやすくなることが想定されるため、公正証書遺言か秘密証書遺言を、ご自身の状況に合わせて選ぶのがよいでしょう。
もしどうしても自筆証書遺言にする場合は、法務局に保管を依頼したり、遺言信託を利用したりするなど、できるだけ安心できる保管方法を選びましょう。

遺言書を公正証書で作るメリット

公正証書遺言は他の遺言と違って遺言内容に特別な効力があるというものではありません。
ただし、2人の証人が立ち合い、法律に詳しい公証人が作成するため、曖昧な表現や形式不備によって遺言が無効になるリスクを避けられるメリットがあります。
また、適切に作成された公正証書遺言が存在すると、遺言者の死後でも、生前の意思を明確に示すことができます。たとえば、祭祀継承者の指定、遺言執行者の指定などを指示することができます。

遺言書に関するQ&A

Q.遺言書を作成したほうが良いのはどのような場合ですか
  • お子さんや配偶者などの相続人がいないおひとり様。
  • お世話になった人に財産をあげたい場合。
  • お子さんがなく、配偶者と兄弟が相続人になる方で、配偶者に全財産を渡したとお考えの場合。
  • 財産(特に不動産)が多く、相続人間での争い事を避けたいとき。
  • 事業を特定の人に継がせたい場合や事業用資産の分散を防ぎたいとき。
Q.病院や自宅で公正証書遺言をすることができますか?

自宅や病院で公正証書遺言を作成することができます。ただ、通常の作成費用に加えて、出張に関する費用がかかることになります。あらかじめ見積もりをとることをすすめします。

Q.公証役場に相談しましたが、財産の分け方や内容の指導はしていないと言われて困っています。どこに相談したらよいでしょうか?

遺言書は作ればよいというものではなく、大切なポイントが抜けていると逆効果になりかねません。遺言書作成前の相続人調査や財産の調査、保険の整理、遺言内容のアドバイス等に対応してくれる、行政書士や司法書士に依頼することをお勧めいたします。

「おひとり様」の場合、相続人以外の方に財産を渡すことになりますので、遺言書の作成は必須といえます。当事務所では遺言書作成前に、しっかりと相続人調査や財産調査、保険の整理をしたうえで、適切なアドバイスをさせて頂きます。ご自身での作成に不安がある場合は、遺言書作成に特化した当事務所にお気軽にご相談ください。