尊厳死宣言公正証書で自分の最後を選ぶ

過剰な延命治療を行わずに、できるかぎり自然に近い死を迎えたい人から注目されているのが「尊厳死」という選択肢です。しかし、延命措置に関する希望を家族に伝えておく、あるいはエンディングノートに記しておくという方法では、尊厳死を選択できるか定かではありません。最期まで自分らしく人生を終えたいとお考えの方は「尊厳死宣言公正証書」を作成することをおすすめいたします。

尊厳死宣言公正証書とは

「尊厳死宣言公正証書」とは、回復の見込みがない末期状態になった場合に、本人が自らの意思で過剰な延命治療のための生命維持装置を差し控え(または中止し)人間としての尊厳を保ったまま旅立ちたいと意思表示する書面」のことです。

リビングウィルとの違い

リビングウィルは、自力で意思表示ができなくなった時に回復の見込みがない場合において、延命措置を行わずに自然に任せて欲しいという意思を医療スタッフに伝えるための書類ですが、法的に有効かは不透明であり、リビングウィルを用意していても、状況によっては医師が判断を迷う可能性もあります。
その点、尊厳死宣言公正証書の場合は、現時点で明確な法律上の規定があるわけではないですが、公正証書として作成されていることから、確実に本人の意思で作成されたことが示されるため、法的にも証拠として認められやすいと考えられます。

医療現場での取り扱い

尊厳死宣言公正証書がある場合に、本人の意思が尊重されるべきですが、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまでは未だ考えられていません。また、治療義務がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面もあり、尊厳死宣言公正証書を作成した場合でも、必ず尊厳死が実現するとは限りません。しかし、実際、現在の医療現場では、尊厳死宣言公正証書で意思表示があった場合、尊厳死を容認する確率は9割を超えているといわれています。

基本的な記載内容

尊厳死宣言公正証書には、主に以下の内容を明記するのが一般的です。

  • 宣言者が過剰な延命治療を望まない旨
  • 拒否する具体的な延命治療の内容
  • 延命治療を中止する条件
  • 医療関係者の免責

尊厳死宣言公正証書に関するQ&A

Q.遺言書の中で尊厳死宣言をしてもOK?

尊厳死は遺言書の法定遺言事項ではありません。遺言書は「死後」について書くものであるため、用途が違うのです。たしかに、法的効力はなくとも「意思を伝える」という意味では、遺言書に書いてあっても良いはずです。しかしながら、遺言書は「亡くなった後に人目に触れるもの」。やはり、尊厳死宣言には馴染まないといえます。

Q.尊厳死は法律上認められていないのですか?

尊厳死は法律上認められていません。最も単純な理屈として、自らの意思で死を選ぶことは自殺にあたり、医師が医療行為を放棄することは他殺にあたるからです。しかし、多様化する人生観において、尊厳死は単なる自殺や他殺とは異なる性質であるということも尊重されているのも現状です。現在、尊厳死の取扱いとして、一定の条件を満たせば実現されているのが実情です。 また、今後の法整備についても議論が進められています。

Q.尊厳死には家族の同意が必要ですか?

尊厳死には必ずしも家族の同意は必要ではありません。 ただし、意識のない本人に代わって医療行為の中断(尊厳死)の最終決断を下すのはご家族です。 ご家族の同意がない場合、主治医においても医療行為の中断に応じない可能性もあります。

尊厳死を希望する場合、リビングウィルやエンディングノートに医療や介護についての希望を記述することなどで意思表明をしておくことも可能です。しかし、それだけでは人生の最後にお世話になった医療従事者や家族に迷惑をかけてしまう可能性も残ってしまいます。現在尊厳死を希望する際に、最も証明力の高い方法が尊厳死宣言公正証書です。終活を考えている方は、遺言書と同時に用意してもよいでしょう。