相続放棄後の遺産の管理責任

「相続放棄をすれば空き家の責任は免責されるのか?」当事務所に多い相談の一つです。
2021年4月21日の国会で「民法等の一部を改正する法律」が成立し、これまで曖昧だった「相続放棄をした者の責任」について、より明確な規定に改正されました。改正法は2023年4月1日より施行されています。
この変更点や、管理から免れるための対処方法をわかりやすく解説します。
相続放棄しても義務は残る?
2023年3月末までのルール
以前の民法では相続放棄しても不動産等の管理義務が残ってしまうケースがありました。それまで民法では次のように定められていたため、相続放棄しても最後に放棄した相続人は遺産を管理しなければなりませんでした。
民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2023年4月からのルール
民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
【現に占有とは】
(例)自宅として使用している、他人に貸して賃料を得ているなど
【管理責任とは】
管理がきちんとされていなかった場合に他人に損害を与えてしまった場合の賠償責任など
結論としては、現に占有していない限りは相続放棄したら管理責任はないということになります。
相続放棄に関するQ&A
Q.疎遠だった兄弟が亡くなったことに気付きませんでした。亡くなってから半年以上経過していますが、相続放棄は無理でしょうか?
可能です。相続放棄は相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。亡くなったことに気付いていなければ、3か月は経過していません。
Q.亡くなった人の家の片付けをしても相続放棄できる?
家の片付けをしても、常識の範囲内であれば相続放棄できます。ただし、家の取り壊しは片付けの範疇を超えているので、相続財産の処分に該当します。
人によっては、古い家を取り壊すのは片付けだと思うかもしれませんが、相続放棄するのであれば家の取り壊しは止めておきましょう。あくまでも、家の片付けとは、家の中を整理整頓するイメージになります。
Q.亡くなった親の口座からお金を引き出したら、相続放棄は無理でしょうか?
お金を消費していなければ、特に問題無く相続放棄は認められています。また、葬儀費用に使ったのであれば、常識の範囲内の金額であれば、相続放棄は認められる可能性が高いです。領収書等はしっかりと保管しておいてください。
当事務所では司法書士と連携し、相続放棄に必要な書類の準備から申請までワンストップで対応することが可能です。一度お気軽にご相談ください。
- カテゴリー
- 相続(亡くなられた後)