銀行預金の相続手続をスムーズに進めるコツ

 被相続人が亡くなったときは、その人が名義人となっている預貯金口座が開設されている金融機関に連絡し、死亡した事実を伝える必要があります。
 金融機関に連絡をすると、被相続人が名義人の口座は凍結されます。凍結を解除するためには、預貯金口座を相続することになった人が、金融機関で所定の手続きをしなければなりません。

預貯金を相続(名義変更)するときの必要書類

遺言書がない場合の必要書類

遺言書がない場合は遺産分割協議を行い、その記録として遺産分割協議書を作成します。

  • 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
  • 通帳・キャッシュカード
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印があるもの)
  • 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本または全部事項証明書
    ※出生から死亡まで連続したもの
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
遺言書がある場合の必要書類
  • 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
  • 通帳・キャッシュカード
  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(検認が必要な遺言書の場合)
  • 被相続人の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡が確認できるもの)
  • 預金を相続する人(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(家庭裁判所で遺言執行者が選任された場合)
家庭裁判所の調停調書・審判書がある場合

相続人どうしで話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停・審判で遺産分割が決まった場合は、次の書類を提出します。

  • 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
  • 通帳・キャッシュカード
  • 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(審判書に確定表示がない場合は審判確定証明書も必要)
  • 預金を相続する人の印鑑証明書

◆以上のように、事前に必要となる書類をしっかりと準備することが手続きをスムーズに進めるためのコツになります。また、遺言書がない場合は遺産分割協議書を作成することをおすすめいたします。

預貯金の相続手続に関するQ&A

Q.葬儀費用や遺族の生活費などの支払いに充てるため、遺産分割前に預貯金を引き出すことはできますか?

はい、できます。令和元年(2019年)7月1日から始まった「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」の制度を利用すると、遺産分割が終了していなくても、預貯金の一部を引き出すことができます。
払い戻し制度で引き出せる金額は「相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分」が上限です。ただし、一つの金融機関から引き出せるのは最高150万円です。

Q.死亡した人の預金の払い戻しは罪に問われますか

ひとりの相続人が他の相続人の了解を得ずに預金の払い戻しをしても、横領罪などの犯罪に問われる可能性は低いです。しかし、他の相続人から不当利得返還請求や損害賠償請求をされる可能性はあります。正しい手順を踏まないと他の相続人とトラブルになるケースが考えられます。

Q.遺産分割協議書を作成せずに口座の解約をしても問題ないですか?

遺産分割協議書なしで預金の相続手続きを進める場合でも、相続税申告相続登記といった他の手続きでは、遺産分割協議書の作成が必要になるケースがあります。また、遺産分割協議書を作成せずに預金を相続した場合、後から相続人間でトラブルが発生する可能性があります。

上記のことから遺産分割協議書の作成をおすすめいたします。

預金の相続手続きでは、必ずしも遺産分割協議書の作成は必要ありませんが、相続人が複数いる場合は、後々のトラブルを避けるために遺産分割協議書を作成しておくと安心です。